任田進一

INTERNATIONAL SYMPOSIUM
　　　“ON THE EDGE”

任田進一　SHIN-ICHI TOUDA

普段自分自身を取り巻く空気が、一新された時に、自分の意識がどう変化するのか非常に興味がありました。リトアニアのゆっくりした時間とおいしいビールは、日本にいる自分よりも、さらに本能的な自分の姿をあらわにするようでしたし、それはそのまま、作ることが、ストレートに自分と関わることに他なりませんでした。参加アーティスト達と一緒に話すことや食べること、といった生活の喜びの一部に、制作が組み込まれていく快感は、正直初めて味わう経験でした。
土の塊を素材に、意識の模索をしてきた私にとって、今回のシンポジウムのテーマである「境界線」は、異なる土地の土の融合というコンセプトで、表現してみようと考えました。シンポジウムの拠点となったニダの街には象徴的な砂丘があり、この砂が、私の新しい素材として、作品に入り込むことになりました。本来ならば、日本から持ち込んだ土の塊のように、ニダの砂の塊を作ることから始めるべきだったのですが、非常に短い制作時間の中では、これが不可能でした。そこで、土の塊を再構成する繋ぎ目として、ニダの砂を使用することにしました。気分としては、日本人の自分が、リトアニアの空気に触れて、どのように再構成されていくのか、といったものです。色も質感も異なる二つの要素は、心配していたアクシデントもなく、予想以上にすんなりと一つの形になりました。そして今までの見せ場とは異なる新しい方向が、そこに生まれていたように思えます。土と砂の間で求めた「境界線」は、馴染むように融合するのではなく、確実に認知できる線や面として、作品に刻まれました。完成度といった見方からでは、もちろん満足できませんでしたが、試みの一つとしての解答は得られたのでは、と感じています。非日常における自意識の変化は、より純粋な本能を呼び覚ましたようです。この感覚を日常の意識に移し替えなければと思っています。

（ニダでの作品）

“ON THE EDGE”　リトアニアでの作品

プロフィール

1971年　神奈川県川崎市に生まれる
1995年　武蔵野美術大学卒業

【展覧会】
1995年　第45回モダンアート展（東京都美術館）
1996年　個展（Gアートギャラリー/東京　銀座）
1998年　個展（ルナミ画廊/東京　銀座）
1999年　個展（トキ・アートスペース/東京　青山）
2000年　エキシビションe（山脇ギャラリー/東京　市ヶ谷）
　　　　　個展（CHIMENKANOYA/東京　中野）
　　　　　まるごと美術館（千葉　旧長谷川病院跡）
2001年　エキシビションe（山脇ギャラリー/東京　市ヶ谷）

神奈川県川崎市在住

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トキ・アートスペース
A.M.12:00-P.M.19:00 (SUNDAY -P.M.17:00) 月曜休廊
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1Ｆ
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